こういう大ベストセラーについては、あまり多くを語る必要はないでしょう。
大筋のストーリーは、(もう映画も公開されたからネタばらしにはならないよね)ルーブル美術館の館長ソニエールが殺され、その夜のアポをとっていたハーバードの図象学者? ラングドンが容疑者にされる。彼はソニエールの孫で暗号解読官のソフィーとルーブルを脱出し、途中解読した暗号を手がかりにチューリッヒ銀行の私書箱に眠るダヴィンチ設計の極秘文書送信用の筒クリプス? を手に入れる。が、銀行からの脱出を手助けしてくれた支店長に裏切られ、こんどは、ブローニュ郊外ラ・ヴィレットにあるイギリス人富豪で旧友の古文書学者の館に逃げ込む。
そこを包囲され、自家用飛行機でイギリスに脱出し、テンプル教会に逃げる。追っ手は何が何でも筒の極秘文書を手に入れようとするヴァチカンのキリスト教原理主義者オプス・デイと館長暗殺犯人を追う警察。ところがこの警察もじつはオプス・デイの息がかかっている。
二転三転して、二晩くらいのあいだにルーブル>チューリッヒ銀行>ラ・ヴィレット>テンプル教会(ロンドン)>ロスリン礼拝堂(スコットランド)と飛び回るんだから、アドレナリン出っぱなしだ。
数分だかに一回の神経興奮が映画成功の秘訣というアメリカ映画を地でいく構成で、これ、もともと映画化を想定して書いたんじゃないかね。まあ、リアリティには乏しい。キリストの受難を追体験するためとされるシリスなんて責め具なんて映画を見れば一瞬でわかっちゃうものを言葉で説明するのはこんなにもボチュームがいるものかって思わされたね、わたしは。マゾヒズムの極致だね。ありゃあ。
ただ、S.キューブリックの遺作になった『アイズ・ワイズ・シャット』なんかにもちょっと触れていて、映画でさらっと流した「性の儀式」のところも一応、押さえてある。あそこは映画ではまったく意味不明だからね。
まあ映画か原作かの論議で言えば、映画化を想定して書かれたようだという時点で映画に軍配があがる。映画はひどく不評だが。きちんとディティール押さえておきたい人には、やっぱり本だ。これはフィクションだが、背景は事実だ。そこんとこ忘れずに。できれば、関連書籍も読んでほしい。
だが、一連のダヴィンチ・コード騒ぎには何か欠けてる。そう、信仰が本来持っている静謐で霊的な側面だ。映画が不人気なのも、人々の心に培われたスピリチュアルなものへの理解がないからだろうと思う。金権にまみれたヴァチカンはどうでもいいけど、信仰心の篤いキリスト教徒はたくさんいるってこと。
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