クリスタル・ボウルってのは、もともとチベット仏教で使われていたチベッタン・ボウルの知恵がアメリカに渡って、コンピュータのチップ入れに使われていたボウルを誰かが鳴らし始めたというところから始まったらしい。
なんでチップをそんなボウルに入れてたのかは知らないけど、クリスタルの微細振動でチップを調整してたのかも知れない。カウンターカルチャーから出発したアップルのウォズニアックだったらやってもおかしくない。何しろ量子コンピュータなんてことを考える連中だからね。
昔、腕時計はねじを巻くものだった。それがクオーツの個体振動を利用すれば、ねじ巻かなくても
いいものになった。「世界は振動している」ってのはこのとき知ったけど、それは知識だけのことだった。
それが、あるとき音遊びの会を主催していた高野さんのところで、皇帝盤なるものに出会った。直径40cmくらいの青銅の水盤だ。ここに水を入れて、縁をこすっていると、水しぶきがあがりだす。何とも不思議な器だ。古代、中国の皇帝はしぶきの上がり方でその日の天気を占ったとされていて、この名前がついているらしいのだが、いろんな名前があるようで、正しい名称はわからない。
同じモノがヤフオクに出ていたこともあるし、吉祥寺丸井横の商店街で店頭において客寄せに使われていたから、結構出回っているのかも知れない。
「金属やガラスなどの半円形の丸いボウルは内部共鳴する」のが原理だと思うけど、世界が微細に振動して、共鳴が見えたり聞こえたりするのは独特の体験だ。
クリスタル・ボウルの演奏家、牧野潤さんの公演を友人の佐藤蓬さんが企画したというので、三鷹の沙羅舎に出かけたのが、04年の12月。座布団がわりのたたみがしいてあったので、横になった。一瞬たりとも寝たつもりはないのだが、あとから、隣にいたセラピストの菅原はるみさんから「気持ちよさそうにいびきかいてましたよ」と言われてびっくり。「いびき」はないでしょ。「いびき」は。
クリスタルボウルではよく起きることらしく、牧野さんは心からリラックスして寝てもいいですよ、というのだが、「いびき」じゃあ、周りが迷惑だ。
まあ、パキスタンの即興宗教音楽カッワーリのヌスラット・アリ・ファテハーンの熱唱のときも
山下洋輔の演奏のときも寝ていた私だから、クリスタル・ボウルで寝たというのは、「そりゃあ、そうでしょ」な話なのだが、「いびき」かいたことはないよなあ、私は。
「毎日、夢の中で暮らしてる私」っていうのは、そういうことなのだが、何とも深いんだなあ、このクリスタルボウルは。2月6日に行われたCAMUNet (代替医療利用者ネットワーク)提携、BE GOOD CAFEで牧野さんに演奏してもらった。300人もの会場でこの深さがどれだけの人に伝わったか心配だ。