4月27日に「mame de cafe」で開かれた「炭・石の不思議 イヤシロチを科学する」のレポートを少しずつしていこう。
まず講演をお願いした、宮嶋望さんと共働学舎についてだ。
宮嶋さんは、池袋にある自由学園高等部で放射線物理を学び、渡米、農場で酪農を学んだあと、ウィスコンシン大学で酪農学を修め、帰国。自由学園教師だった父の慎一郎さんが「もっとほんとうの教育を必要としている人がいる」と始めた共働学舎を展開すべく、帯広に近い日高山脈の山のなか、北海道新得町に入植する。廃材を利用してセルフビルドで宿舎を建て、障害者と共生・共働する共働学舎には現在60名が暮らす。
乳質のいいブラウンスイス種を導入。作業の遅い仲間でもできるチーズづくりに取り組む。十勝チーズサミットを開催し、ナチュラルチーズ・コンテストで優勝。昨年は農場で生産されるフェルミエタイプの世界コンテスト「山のチーズコンテスト」で金賞、フランスのシュバリエに認定されたチーズづくりの一人者でもある。
島村菜津さんの近刊『スローフードな日本』でも紹介されている。今回は25~26日とNHKの取材で上京されるタイミングに合わせて、急遽、午後の半日、時間をいただいた。
●山のチーズ・コンテストと共働学舎
どうして「山のチーズ」って呼んだかっていうと、(*金銭に象徴された)経済循環の有利な大都市のようなところからいちばん遠いところでがんばっている人、(*いのちの原点である食糧を)生産しているところで暮している人たちの生活を支援しよう、大地に根ざして生きている人を守ろうというのがそう名づけた理由だそうだ。
(*経済という言葉は「経世在民」からあてられた用語で、循環するすべてのものを意味し、昨今使われているようなお金や株のことだけをさしてる訳ではないと、橋本治が『市場原理は嘘かもしれない』集英社新書 で言っている)
その理念に共感したから「よし参加しよう」ってことになった。
健常な人と違い作業の遅い障害者がいっしょにできることで、付加価値の高い商品をつくろうと考えていて、チーズづくりだ(*小さな生産者、ゆっくりした時間、これぞスローフードの原点ですね)と思って取り組みはじめたとき、フランスAOC会長のヒュベールじいさんから「牛乳を運ぶな」と言われた。「ポンプを使って牛乳を運ぶな」と。
(*宮嶋さんたちは、ヒュベールさんらを呼んで「十勝チーズサミット」をやっている。)
通常のチーズや牛乳だとトレーサビリティができません。どうしてかっていうと、搾乳した生乳を集荷するからです。その間、普通は4回ポンプを使う。うちは 1回しか通ってない。(*ちなみに無殺菌で話題になった「想いやり牛乳」の長谷川さんの工房もこの考えを実践していて、ポンプは1回しか使っていないそうです)
搾乳室とチーズ工場を、傾斜を利用して自然流下させていますが、管を利用しているので遠くてはダメ、それぞれを近づけなくてはならない。ところが保健所の規定では50m離さなければならず、離せと言う。牛舎の雑菌が混入するというのが理由です。で、雑菌が繁殖しないように衛生管理できればいいんだろうということで、炭を埋め、距離23mでつくった。炭埋するとハエが羽化しないんです。
(*炭埋は地中に電池をつくるみたいなことですが、場に微弱な電位ができる。すると腐らなくなる。腐るというのは、電位が無くなった時に起きる現象のようです。発酵と腐敗をわける鍵は電位の有無らしい。電位がなくなると酸化が始まり、腐敗が始まるわけです。死んだら酸化がはじまり、酸化したものに腐敗菌が集まる)
(*宮嶋さんからの問いかけに、腐敗と発酵を分けるのは、好気性の菌と嫌気性の菌ではないのかと質問がありました)
次回は「生死と腐敗」です。このペースでは一週間かかるなぁー。まだ初めの30分にもなってない。
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