で、この一覧のなかでナントいっても面白かったのは、最初にあげた『香水』です。文庫になった当時から、池内紀訳とカバーのルノワール風裸婦像が気になって、買い置きしてありました。こういうのってよくあるんです。ニコラ・プッサンの絵が表紙になってる『隠された聖地』とか、岸根卓朗先生の『宇宙の意思』とか。
普段はあんまりフィクション読まないんだけど、ときどき気分転換もかねて読んだりします。フィクションが嫌いなわけではないんです。読み出すととまらないのはフィクションのほう。だから、あえていえば、深みにはまらないように用心深くしているとでもいうところでしょうか?
篠田節子が『ゴサインタン』や『弥勒』を発表していた頃は「神様・仏様・節子様」くらいにはまっていろんな人にすすめていました。その昔ならスティーブン・キングなんかもそう。ストーリー・テリングが上手くて、きちんとした世界観持っている人には賛辞を惜しみません。
臭気と樟気に満ちた18世紀パリ。遺棄された胎児として生まれ落ち、匂いがしないと孤児院をたらい回しにされ、闇夜を匂いでかぎわけ明かり無しで歩けるという異能の持ち主グルヌイユが主人公、皮なめし屋から調香師にのぼりつめ、富と名声を得ながらも、無垢な乙女をただその香りを固定するために殺し、処刑すらも回避しうる香りを創作しながら、最後に望んだものは?
ネタはばらさないんで読んでくださいね。損はしません。
誤解を怖れずにいえば、アロママテラピーの「いい」香りなんて薄っぺらなもののように思ってた。三十代の頃、帰宅途中にある畑のそばを通ったとき、漉き込んだ腐った野菜の匂いに出会い、脚の力が抜け、へたへたとその場にしゃがみ込み、嗚咽したことがあります。いまもって理由はわかりません。ただ、香りは不思議な力を持っているとことだけはわかっていました。
われわれ日本人は外国人には醤油くさいなんてこと聞いたことあります。自分の放ってる匂いに気がつかないってことよくあります。読んだあとにわが身体をくんくんかいでみてしまいましたね。
難しく言えば、存在と匂いを巡る深奥を描いたってことになるんでしょうが、ま、調香師やアロマセラピスト、発酵醸造、食品加工にかかわる人にはまずおすすめしますね。もちろん、食べたり出したりタバコをすったりするあなたにもです。
老婆心で付け加えれば、体臭が気になるなら、明日から香功はじめてはいかがですか? いい香りがするようになるっていいますよ。
アロマの人には、腐敗と発酵の違いや、人はどうして臭いものにひかれるのかなど教えてください。



コメント (1) »
有岡さま
この小説は、私が翻訳した「心を癒すアロマテラピー」の中に出てきて、いつか読みたいと思いながら、まだ読んでないものでした。この書評を読んで、読んでみたいと思いました。実際、香りや匂いはパワーフルですよね。嗅覚は脳と直結しているので、瞬時に思い出をよみがえらせ、感情を揺さぶります。
私は、アロマジェネラという芳香心理学のセラピーの創始者のイギリス人の理学療法士でアロマセラピストの人から、特別なブレンドによるオイルの香り選んで嗅いだところ、ある記憶とつながり、泣きました。その時私は40代でしたが、蘇った記憶は20歳頃のことです。 ではまた。林サオダ
コメント by 林 サオダ — 2006/6/27 @ 6:35:05
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