『ダ・ヴィンチ・コード』の関連本がたくさん出ています。すべてをチェックしたわけではないので断定はできませんが、まあ、多くは便乗企画と言っても差し支えないのではないでしょうか。便乗か便乗でないかの分かれ目は、『隠された聖地』河出書房新社 や『レンヌ・ル・シャトーの謎』柏書房、『ナグ・ハマディ写本』白水社のように『ダ・ヴィンチ・コード』出版前に発行されていたかどうかです。
ただ、『ユダの福音書を追え』や『イエスの血統』青土社 のようなものは便乗というより、『ダ・ヴィンチ・コード』をきっかけにキリスト教が成立するにいたった歴史を読み解こうとするもので本家帰りといっていいんだろうけど。
この本は、その点では便乗ものといっていいものですが、ダ・ヴィンチの謎解きは「イエスの血族」「地中海とマリア信仰」「母性と女性性」「古代信仰に秘められた自然科学」といった人類史にまたがる文化的宗教的側面、これらを教会の弾圧、異端審問から守ってきたカタリ派やグノーシスなどの異端思想。「シオン修道会」「テンプル(聖堂)騎士団」「薔薇十字団」「フリーメーソン」などの秘密結社の実態、さらにそのために使われた錬金術を含む数々の自然技術、黄金分割比などの数秘術。フィボナッチ数列などの暗号術、絵画に秘められた謎をとく図象学、と膨大なものになる。ひとつひとつのテーマで数冊の本を読まなければいけないようなものだから、それらを整理しておくにはとてもいい副読本といえそうです。
「聖骸布」や「聖書の暗号」など、キリスト教はときどき、わたしたちにひとかたならぬ知的興奮をもたらしてくれます。コンスタンチヌス帝のときに取捨選択してつくられた「新訳聖書」が虚妄だったのか? 多くの福音書が再検証され、聖書にとりこまれた当時の異端の自然学が明らかにされるのは、自然に屹立する思想体系の土台となった一神教、キリスト教文化を再検討するうえでも大事なことになりそうな気がするのです。
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