パトリス・ル・コントの名画『髪結いの亭主』は不思議な映画です。冒頭から主人公のくねくねとした踊りとアラブの音楽で始まります。この音楽はマイケルナイマンのものらしいのですが、どういうわけか妙に惹かれます。前世というものがあるとすれば、前世はアラブだったのでは思わせるほど惹かれるのです。
アンダルシアと海を隔てたモロッコにアルアンダルスの音楽があります。丁度、ユーミンとアンダルシアの番組をやっていました。キリスト教徒によるレコンキスタ(聖地回復運動)でアンダルシアを追われたイスラム教徒が故郷アンダルシアを懐かしんで歌った魂の音楽だそうです。リュートの元型らしきウードという楽器を伴奏に朗唱する、ほとんど唸りにも似たそのこぶしのきいた歌声。こちらは唸りがどんどん高音に導かれるのですが、よく似てました。
行ったこともない土地の音楽に懐かしさを感じて惹かれる。不思議です。
どうやら、ここには共振と共鳴の原理が働いているようです。共振は同じ波長の音に導かれるようにして他の音が自然になり出す現象をいいます。音叉やギターのハーモニックスで耳にします。どちらの音が叩くなり、こするなり、つま弾くなりのはたらきかけを受けたのか分らなくなります。
共鳴はここに音色がくわわります。音色まで同調するのです。これらは、音の深いところで起こるのでときに魂の音楽とか宇宙の音楽とか言われます。番組でユーミンも宇宙の音楽に深く感動しているようでした。
2009/3/31
2009/3/27
「感応、官能の極北のことを『自律神経の快楽』って言ってそれこそが、命の変革だと言ってるのは気功の第一人者津村喬さんです。法悦でも悦楽でもエクスタシーでも変性意識でも、なんと呼んでもいいんだけれど、かく言うわたしもそっちのほう。」
「はまってるものは『不思議な音と変性意識』『炭と水とイヤシロチ』『微細エネルギーと代替医療』『古代の知恵と巨石』「常磁性」『マクロビオティックと有機農業』『気持ちいい自然』。一言で言えば、共鳴といのちの仕組みっていうことでしょうか」と以前、mixiのプロフィールに書いたことがあります。
官能とかエクスタシーと言うと下世話な方を思い浮かべる人も多いんでしょうが、あえて誤解を怖れずに言えば、若い頃のわたしは官能主義者であった時期もありました。わたしの好きな映画監督パトリス・ル・コントの名画『髪結いの亭主』の宣伝文句風に言えば、かほりたつ官能という言葉が適当かも知れません。
有名な音楽評論家に皆川達夫さんがいます。その皆川さんは、中世音楽合唱団という市民合唱団を指揮してもいるのですが、合唱しているときに恍惚境に至る人が多いことを言っておられました。合唱中にそれこそ極楽にいるような至福感を感じるのだそうです。そこで楽屋をたずねて、あれは「倍音のことですよね」とお聞きしました。返事は「その通りです。」でした。
倍音環境は自然の模写です。人間の感覚は自然が放つ光・音・匂・味・熱などを異和として差として感じ、それに対して共振するように発達したものだからです。やがてその中に特異な領域があることを発見しました。それが倍音です。
音や音楽における倍音、光や美しい絵画における黄金分割のようにはまだ名付けられていない匂いや味覚・触覚、その総合感覚である温泉のような自然にも感応はあるでしょう。
自然に感応するエロスは生命の輝きです。誰も否定はできません。